治療がめざすもの
人は自分を幸せだと思う時もあれば、不幸せだと思う時もあります。しかし、本当に幸せな時には、そんなこと考えてもみないものです。この「考えてもみない」という幸せの中にこそ、わたしたちの治療の目標があります。
憂うつ、不安、緊張
「だれでも憂うつになることはあるのに、それと、うつ病はどこが違うの?」という質問をよくいただきます。そこで、うつ病の憂うつ、パニック障害の不安、対人恐怖症の緊張の3つについて、症状としての特徴をあげてみました。
うつ病の憂うつ
だれでも憂うつになることもあれば、将来を悲観することもあります。また、物事が思うようにいかなくて、意欲がなくなることもあります。したがって、それだけでうつ病と診断することはできません。
うつ病診断の決め手はいくつかありますが、もっとも特徴的なのは、仕事や家事をするなかで、簡単な選択ができなくなることです。
たとえば家事の場合には、その日の献立を考えられなくなります。仕事の場合ですと、複数の仕事をかかえているとき、どれから手をつけたら良いのか分らなくなります。
べつに悩むほどのことではないと分かっていても、考えが堂々巡りになって、いつまでたっても結論がでません。どれでもいいから適当に選ぶということができなくなります。
パニック症候群
なにかに驚いたり、だれかにむかって興奮したりして、動悸や息苦しさ、不安や恐怖に襲われたとしても、これはパニック障害とは別のものです。
パニック障害とは、恐れたり興奮したりする理由のない場面で、突然に動悸や窒息感が現れ、このまま気絶するのではないか?死ぬのではないか?という強い恐怖を感じるものです。
また、パニック障害はしばしば広場恐怖をともないます。これは、人混みや、いったん入るとすぐには出られないような場所への怖さを意味しています。たとえば、トンネルや高速道路、電車や飛行機など公共交通機関、歯科医院、理美容室や映画館などです。
対人恐怖症の緊張
人前で「あがる」「緊張する」というのは、ご本人にとって好ましいことではないにしても、だれにでも普通にみられる心理です。こうした単なる「あがり症」と、対人恐怖症の不安や緊張は異なります。
対人恐怖症とは、人前で現れる自分の身体的な現象についての不安と緊張を意味しています。身体的な現象とは、たとえば顔が赤らむ、手や声が震える、汗をかく、やたらと瞬き(まばたき)をしてしまうなどです。
どれも、他人から見ると、気に病むほどの重大事ではないのですが、ご本人はそのことばかりを意識してしまい、人前で自然な態度をとることができなくなります
家庭でできる自己治療